ワンダと巨像
対応機種 | |
ハード | プレイステーション3 |
ジャンル | アクションアドベンチャー |
発売元 | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
発売日 | 2011年9月22日 |
アリが巨象を倒すが如く。
ある目的のために、青年は巨像と戦う。
史上もっとも"美しい"ゲームだ。……と某ファミ通クロスレビュアーはこの作品をこう評した。
少々大袈裟だと思ったが、言わんとしている気持ちは分かる気がする。
柔らかい光が神秘的な雰囲気を生み出すグラフィック。
そこから創造される広大な世界は、風が吹き、植物が息づき、水が流れ、その中に身を置くと空気感すら伝わってくる。
そして、圧倒的な巨像の存在感。
静寂を打ち破って現れるそれは確かにその世界に息づく生命体として、そこにいる。
本作は2005年にプレイステーション2で発売されたものをHD(高精細度画像)にリマスターしたもので、プレイステーション3のパワーによって元々綺麗だったグラフィックに磨きがかかっている。
更に追加要素として3Dにも対応。迫力ある巨像との戦いが益々盛り上がることだろう。
物語は、青年ワンダが亡骸となった少女を蘇らせるために巨像と戦うというもの。
少女を蘇らせる経緯がよく分からないが、そのためなら巨像を殺してもいいのかという葛藤が付きまとう。筆者の場合「悪魔を殺して平気なの?」という女神転生の名セリフが不意に頭をよぎった。
真っ黒の血しぶきを噴出して崩れ落ちる巨像に罪悪感を感じるプレイヤーもいるかもしれない。
本作はビジュアル重視の作りになっており、ゲーム中はほとんどテキストが表示されず、ただ広大な世界を駆け廻り、巨像を探し出して倒すというシンプルな内容である。
「巨像を探す」「巨像と戦う」の2行程に絞った潔いゲーム性は、シンプルが故に強い没入感を生み出す。ただ世界が広過ぎて、巨像を探すのに手間取ると、人によってはダルいと感じるかもしれない。
ゲームスタートしてオープニングが終わると、さっそく巨像を探す旅が始まる。
といってもこの世界にはワンダ以外の登場人物がおらず、RPGのように人に聞き込みをして巨像の居場所を特定する訳ではない。
ワンダが携える"いにしえの剣"を〇ボタンで掲げ、光が集束する方向に進むのである。
日当たりの良い場所でこの行動をすることによって、巨像の居場所を指し示す光の方向を目指す訳だ。
スタートボタンでマップを確認し、ワンダが向いている方角と、剣の光が指す方向を交互に確認しながら、巨像がいると思しき場所に見当をつけて移動するのだ。
しかしながらこの世界は非常に広大で、徒歩だと膨大な時間がかかってしまうので、愛馬アグロの背に乗ってスピーディーに駆け抜けよう。アグロは一部の場所を除き、×ボタンでいつでも呼び出せる。
首尾よく巨像を発見することが出来たら、いよいよ戦いの幕が開ける。
初めて巨像を見た時「こいつどうやって倒すんだろう」と途方に暮れた程の迫力と巨大さである。
人型・動物型の様々な種類がおり、戦闘シーンも地上・洞窟・水中・天空・地下と多岐に渡る。
巨像それぞれ特徴がはっきり異なり、いずれも攻略法を見出すまでが勝負。
巨大な相手に単身戦いを挑むのは燃えるものがあるぞ。
基本は、巨像の身体にしがみついてよじ登り、弱点を剣で突き刺して倒す。
R1ボタンでしがみつき、弱点部まで慎重に移動。そして□ボタンで剣を振りかぶって力を溜め、一気に突く。こうして何度か攻撃し、巨像の体力をゼロにすれば勝利となる。
戦闘が始まったら、まずは巨像を見て、どこが弱点なのか、どこから登れるかといった点を念頭に置いてよく調べる必要がある。そして巨像だけでなく、周囲の地形やオブジェクト等にも注目。巨像を倒すためのヒントや仕掛けが隠されていないか、注意深く観察するのだ。例えば、高い建造物に登り、その上から巨像に飛び移るといった発想が求められる場面も少なくない。
巨像の弱点部には青白く輝く紋章が浮かび上がり、剣を装備した状態で近づくと分かる仕組み。
〇ボタンで剣の光を弱点部に当てることによっても判別可能だ。
ここを目指して剣を突き立てるためには、巨像の攻略法・地形・武器・オブジェクト等あらゆる要素を総動員して挑まなければならない。
倒し方が分からない巨像と対峙した時、どうやって攻略するのか色々と想像力を駆使して試行錯誤する過程を楽しめるかどうかが、このゲームの評価を分けるだろう。
ただよじ登って弱点を突くだけと聞くと簡単そうな印象があるが、実際にはそう簡単にいかない。
このゲームで上手いなと思ったのが"腕力システム"の存在である。
画面右下にあるピンク色の円形ゲージはワンダの腕力を表しており、巨像に掴まっている時に振り回される等、腕に負担がかかると徐々に減っていき、手を休めると回復する。そして何かに掴まっている時に腕力ゲージが無くなると、手を放してしまうのだ。そのため、巨像に掴まりっ放しでいられる訳ではなく、上手に腕力の回復を図りながら弱点を目指すという努力が必要になる。
巨像にしがみついていると、相手もワンダを振り落とそうと激しく身体を揺さぶって抵抗するため、ついボタンを押す指に力が入ってしまう。「絶対に手を放さぬものか!」という緊張感に満ちた戦いが味わえるのも本作の魅力だ。
巨像を攻略するにあたり、剣での攻撃以外に重要な要素は"弓"と"アグロ"の存在。
弓で巨像を射ると僅かにダメージを与えられるものの、これが決定打になることはない。直接の攻撃用というよりも、巨像の注意を引くための道具と考えた方がよい。弓で巨像を挑発したり、体勢を変えさせるきっかけを生み出すといった用途が主になるだろう。ちなみに弓で射た矢はしばらく残り、対象物(巨像や木の実など)にちゃんと刺さっているところが芸が細かい。
アグロはフィールド移動のためだけにいるのではなく、一部の巨像戦ではアグロと共闘しないと攻略出来ない。戦う場所が広く、動きが速い巨像が相手の場合、大抵はアグロがいないと攻略出来ないと考えよう。馬上から巨像に飛び移ったり、流鏑馬よろしく馬上で弓を使う等、ひと工夫いる巨像も多い。
本作にはレベルや経験値の概念は無いが、体力値と腕力ゲージの成長要素は存在する。
体力については、フィールドに点在する木の実を取ることでMAX値が上昇する。木の実は一本の木に複数ある場合が多いので、よく確認して弓で射落とし、〇ボタンで拾おう。
腕力ゲージは、トカゲの尻尾を集めることで上昇。
各地に点在するセーブポイント近辺にはトカゲがおり、剣か弓で仕留めると尻尾だけ残る。これを一定数集めると腕力ゲージの最大値が上がる仕組みだ。時々出る白い尻尾のトカゲは、一匹分のみで最大値が上がるので、見つけたら必ずゲットしよう。
一度倒した巨像は、遺骸となった巨像の傍らで祈ることで"回想"というかたちで再戦が可能。これにより何度でも好きな巨像と戦えるが、それにはいちいち目当ての巨像が居た場所まで行かなくてはならず、かなり面倒である。
このゲームをより深く楽しもうと思うなら、一度クリアして2周目にチャレンジしよう。より難しいハードモードと、好きな巨像と瞬時に戦えるタイムアタックモードが解放されるので、腕に自信があるプレイヤーは是非挑戦するといい。
美しいグラフィックばかりに気を取られがちな本作だが、クラシック調の荘厳なBGMにも注目してもらいたい。普段のゲームシーンは風の音や水の流れといった"自然の音"が流れるのみで静かな雰囲気であるが、ひとたび巨像が現れると、その場面に応じた曲調のBGMが流れ出す。そして有利な展開になる等、盛り上がるシーンに合わせて曲も変化するところが良く出来ている。世界観に調和した音楽は別途サントラで聴きたいレベルの名曲揃いだ。
戦いを重ねるにつれて、段々とワンダの身体や服が汚れていく様子は、戦いの過酷さを暗に物語っている。そうまでして少女を救いたいのか、青年が抱く意思の強さが画面から伝わって来るようで、言葉ではなく全てビジュアルで表現されているところが素晴らしい。こういったゲームはあまり見かけないだけに、世界で高評価を獲得したのも分かる気がする。
倒すべき巨像は全部で16体おり、全て倒せばエンディングとなる。
だがそこに至るにはプレイヤーの知恵とアクションが試される。
クリアするだけなら攻略サイト等を見れば簡単かもしれないが、この独創的なゲームを生み出した制作者に敬意を表す意味でも、出来れば自力で全ての巨像と戦ってほしい。
きっと最後の巨像を倒した時、この上ない達成感を味わえるはずである。
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ICO/ワンダセット買ってますよ~。本当にきれいな作品ですよね。
作品全体から出ている哀愁みたいなものもせつなくてよいです。
「絶対に手を放さぬものか!」 → とてもよく分かります(笑)
更新お疲れ様でした。
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ICOもそうですが、本当に既存の枠に収まらない独創的なゲームですね。
HDリマスターのセットBOXで出たのも、ファンには嬉しいサプライズでしょう。
制作中の「人喰いの大鷲トリコ」もどのような作品になるのか大いに楽しみです。